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「特定技能で外国人を採用したいが、うちの会社でも受け入れできるのか」「何をどう準備すれば採用まで進めるのか」——そんな疑問を、採用を検討中の経営者や人事担当者の方からよくいただきます。
特定技能ビザは、即戦力の外国人労働者を比較的スムーズに採用できる制度として注目されています。しかし、受け入れ企業側には法律上の義務と体制整備が求められており、「採用を決めた後で初めて条件を確認した」では準備が間に合わないケースも少なくありません。
この記事では、池袋で特定技能・就労ビザ申請を専門に扱う行政書士が、受入企業の要件・支援義務・登録支援機関との役割分担・社内体制のチェックポイントを実務経験をもとに解説します。
この記事でわかること
- 特定技能外国人を受け入れられる企業の要件
- 受入企業に課される「支援計画」10項目の義務
- 自社実施と登録支援機関委託の違いと選び方
- 受入前に整えるべき社内体制チェックリスト
- 行政書士が見た「受入失敗企業」に共通するパターン
筆者は、池袋行政書士事務所「リライアンス東京」の行政書士です。就労ビザ・特定技能専門として、これまで多くの企業様の受入準備・申請サポートを行ってきました。この記事が、採用準備の最初の一歩になれば幸いです。
特定技能外国人を受け入れられる企業の要件とは
特定技能外国人を受け入れるためには、企業(所属機関)自体が一定の要件を満たしている必要があります。要件を満たさない企業は、申請を行っても不許可になるだけでなく、受入適格を失うリスクもあります。
欠格事由に該当しないこと
出入国管理及び難民認定法と特定技能法令は、受入企業の欠格事由を具体的に規定しています。以下のいずれかに該当する企業は、特定技能外国人を受け入れることができません。
- 直近5年以内に労働関係法令・社会保険関係法令に違反して罰則を受けた経歴がある
- 直近2年以内に特定技能外国人を不適正に雇用・支援した事実がある
- 直近2年以内に受け入れた特定技能外国人に行方不明者を出した
- 法人税・消費税・社会保険料に未払いがある
- 役員に5年以内に罰金以上の刑に処せられた者がいる
- 暴力団員等が事業活動を支配している
社会保険・税金の未払いは要注意
社会保険料や税金の未払いがある場合、申請書類の審査段階で発覚します。採用計画と並行して、自社の未払い状況を確認しておきましょう。特定技能外国人の採用をきっかけに社会保険加入手続きを整備する企業も多くいます。
日本人と同等以上の報酬を支払えること
特定技能外国人の報酬は、同じ業務に従事する日本人労働者と同等以上でなければなりません。「外国人だから安い賃金でいい」という考えは制度上許されておらず、申請書類にも報酬の根拠を示す書類の提出が求められます。
具体的には、同一業務・同一経験年数の日本人社員との比較が基準となります。自社に比較対象となる日本人社員がいない場合は、業界水準・地域の最低賃金を参照した合理的な説明が必要です。最低賃金を下回ることは絶対に認められません。
受入企業に課される「支援計画」の義務
特定技能制度で最も見落とされやすいのが、受入企業には外国人労働者への支援義務があるという点です。単に雇用するだけでなく、生活・就労の両面でサポートを提供し、その内容を「支援計画」として文書化・実施することが義務付けられています。
法令上、義務的支援は以下の10項目です。
| 項目 | 内容の概要 |
|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 入国前・入国後に日本での生活・就労について説明する |
| ② 出入国時の送迎 | 入国時・離職時の空港送迎(原則として実施) |
| ③ 住居確保の支援 | 居室の提供または賃貸物件探しの補助・情報提供 |
| ④ 生活オリエンテーション | 銀行口座・各種行政手続き・生活ルールの説明 |
| ⑤ 日本語学習機会の提供 | 日本語教室・学習アプリ等の情報提供・費用補助 |
| ⑥ 相談・苦情対応 | 生活・就労上の悩みを母国語等で受け付ける体制 |
| ⑦ 日本人との交流促進 | 地域行事・社内イベントへの参加機会の提供 |
| ⑧ 非自発的離職時の転職支援 | 会社都合で解雇した場合のハローワーク紹介等 |
| ⑨ 定期的な面談 | 3ヶ月に1回以上、担当者と外国人本人が面談し記録を残す |
| ⑩ 行政機関への通報 | 人権侵害等が疑われる場合に関係機関へ通報する義務 |
支援計画は「書くだけ」では不十分
支援計画書に記載した内容は、入管への届出や実地調査で「実際に実施しているか」を確認されます。「計画書には書いたが実施していない」では届出義務違反になりかねません。実現可能な支援内容だけを記載し、記録を残すことが重要です。
自社で支援を実施するための条件
受入企業が自社で支援を実施する場合、以下の条件を満たす必要があります。
- 支援担当者が選任されていること(複数名可)
- 担当者が外国人の日常的な相談に対応できる言語能力または通訳の準備があること
- 担当者が2年以上の在留支援実務経験 または 適切な研修を受けていること
- 支援担当者が外国人本人の上司・監督者でないこと(中立性の確保)
「社内に英語や中国語を話せる社員がいる」という理由だけでは不十分なケースがあります。担当者の実務経験・研修履歴・中立性の観点から自社の体制を冷静に評価してください。
登録支援機関に委託する場合
支援業務のすべてを登録支援機関に委託することも可能です。この場合、自社での支援体制整備の義務は免除されます。多くの企業が登録支援機関への委託を選んでいる理由は以下の通りです。
- 多言語対応が充実しており、外国人が相談しやすい
- 専門知識をもったスタッフが支援を担当する
- 定期面談・記録管理・届出代行まで一括して任せられる
- 社内の人的リソースを本業に集中できる
委託しても企業の責任はゼロにはならない
登録支援機関に委託しても、雇用主としての法的責任は受入企業に残ります。「すべて委託したから関係ない」という姿勢は危険です。定期的に支援の実施状況を確認し、登録支援機関との連携を維持してください。
受入前に整えるべき社内体制チェックリスト
受入企業の要件を満たしていても、実際の採用・入社後にトラブルが起きるケースの多くは「社内の準備不足」が原因です。採用が決まる前の段階から、以下のチェックリストで自社の準備状況を確認してください。
1雇用条件の整備
- 日本人同等以上の給与水準を設定できているか
- 雇用条件書(特定技能専用フォーム)を準備しているか
- 社会保険(健康・厚生年金・雇用・労災)の加入手続きができるか
- 控除後の手取り計算を正確に行える担当者がいるか
2住居の確保または情報提供
- 社宅・寮を提供する場合、適切な居住環境が確保できているか
- 自社提供しない場合、賃貸物件探しのサポート体制があるか
- 外国人が賃貸を断られるケースへの対応策があるか
3社内担当者のアサイン
- 支援担当者(中立の立場で相談を受けられる人)を決めているか
- 担当者がある程度の多言語対応または通訳手配ができるか
- 担当者の業務負荷が過大にならないよう配慮されているか
4協議会への加入準備
- 採用予定分野の協議会加入手順を確認しているか
- 雇用後4ヶ月以内の加入スケジュールを把握しているか
- 加入申請の担当窓口・必要書類をリストアップしているか
5定期面談・記録の仕組み
- 3ヶ月に1回の定期面談スケジュールを組めているか
- 面談記録を保存・管理するフォーマットがあるか
- 入管への定期届出(受入状況報告)の担当者を決めているか
特定技能外国人を受け入れる際の支援義務・届出義務に関する最新情報は、出入国在留管理庁の公式サイト(moj.go.jp)で確認することをおすすめします。法令改定が随時行われているため、最新情報の把握が重要です。
行政書士が見た「受入準備で失敗した企業」に共通するパターン
私がこれまでに相談を受けた中で、特定技能外国人の受入後にトラブルを抱えた企業には共通したパターンがありました。採用を検討されている企業様に特に知っておいていただきたい2つの事例を紹介します。
事例① 支援計画書を「書くだけ」で終わらせてしまったケース
「支援計画書はきちんと作って提出したのに、なぜ入管から問い合わせが来たのでしょう…」
製造業の企業様からいただいた相談です。申請時に提出した支援計画書には「月1回の面談を実施する」「日本語学習の機会を提供する」と記載されていました。しかし実際には入社後の多忙を理由に面談が実施されず、記録も残っていませんでした。
入管への定期届出(受入状況報告)の記入欄で「面談を実施しましたか」という問いに正直に「実施できていない期間があった」と回答したところ、指導の対象となってしまいました。
支援計画書に書いた内容は実施義務が生じます。「書いたが実施できなかった」は届出違反のリスクに直結します。書く前に「本当に実施できるか」を社内で確認することが最重要です。
事例② 協議会加入を後回しにして受入適格を失いかけたケース
飲食業の企業様では、採用後に「協議会への加入が必要だ」と初めて認識し、加入手続きを開始しました。しかし該当する協議会の加入申請から証明書発行まで約2ヶ月かかることが判明し、雇用後4ヶ月以内の加入期限ギリギリになってしまいました。
更新申請の際に協議会の加入証明書が必要となりますが、加入が遅れると証明書の提出が間に合わず、更新に支障が生じるリスクがあります。協議会加入手続きは採用が決まった段階、遅くとも入社前には着手することをおすすめします。
よくある質問
Q登録支援機関に委託すれば、企業側に義務はなくなりますか?
支援業務の実施義務は委託により登録支援機関に移りますが、雇用主としての法的責任は受入企業に残ります。入管への定期届出・受入状況の把握は企業が引き続き行う必要があります。「委託したので何もしなくていい」ではなく、登録支援機関と連携しながら受入状況を把握し続ける姿勢が求められます。
Q社内担当者が日本語しか話せない場合、支援は自社で実施できますか?
外国人が母国語や理解できる言語で相談できる環境を作ることが法令上求められています。通訳サービスの利用・翻訳アプリの活用などを組み合わせれば、日本語のみの担当者でも対応できる場合があります。ただし、特定技能外国人が安心して相談できる環境かどうかを総合的に判断することが重要です。対応が難しい場合は登録支援機関への委託をご検討ください。
Q採用が決まってから受入準備を始めても間に合いますか?
採用決定後から準備を始めても間に合う場合はありますが、早いほど安全です。支援計画書の作成・協議会加入・住居確保など、並行して進めるタスクが多いため、採用を検討し始めた段階で行政書士や登録支援機関に相談することをおすすめします。準備の順番や優先度のアドバイスにより、全体のリードタイムを短縮できます。
まとめ
特定技能外国人の受け入れは、正しい準備さえ整えれば多くの企業が活用できる制度です。しかし「採用できる」と「適切に受け入れられる体制がある」は別の問題です。
この記事のポイントをまとめます。
- 受入企業の要件(欠格事由・同等報酬)を早期に自社チェックし、問題があれば採用前に解消することが第一歩
- 支援義務10項目は「計画書に書いた内容が実施できるか」を先に検討してから記載する。実施できない内容を書くことが最大のリスク
- 登録支援機関への委託は体制整備の有力な選択肢だが、雇用主責任は残るため状況把握を怠らない
池袋行政書士事務所「リライアンス東京」では、特定技能外国人の受入準備から申請サポートまで一貫してお手伝いしています。「まだ採用を検討中の段階だが、自社で受け入れられるか確認したい」という段階でのご相談も大歓迎です。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。