特定技能ビザの登録支援機関とは?自社支援との違いと委託先の選び方

目次

    「特定技能外国人を採用したいが、支援計画はすべて外注しないといけないのか」「自社でやれる部分はあるのか」——当事務所にはこうした疑問が毎月のように寄せられます。

    特定技能1号の外国人を雇用する企業には、入国後の生活・就労をサポートする「義務的支援」の実施が法律上求められています。この支援業務は自社で行うこともできますし、登録支援機関という専門の事業者に委託することもできます。どちらが適切かは企業の体制・人員・経験によって異なり、「とりあえず委託すればよい」というものではありません。

    この記事でわかること

    • 特定技能1号を雇用する企業に課せられる「義務的支援」の8項目
    • 自社支援が可能かどうかの判断基準とチェックリスト
    • 登録支援機関に委託するメリットと見落としがちな注意点
    • 登録支援機関を選ぶ際の4つの具体的な判断基準
    • 行政書士と登録支援機関の役割の違い

    筆者は池袋を拠点とする行政書士事務所(リライアンス東京)で、就労ビザ・特定技能ビザの申請支援を多数手がけてきました。本記事では、申請手続きだけでなく「入国後の支援体制をどう整えるか」という企業の実務判断に役立つ情報をお届けします。

    特定技能外国人の「支援義務」とは何か

    特定技能外国人の義務的支援8項目を示す図解

    特定技能1号で外国人を雇用する企業(特定技能所属機関)は、外国人本人が日本で安心・安全に就労できるよう、入国前から在留中にわたって一定の支援を実施する義務があります。この義務は「特定技能外国人支援計画」として文書化し、出入国在留管理庁に提出することが求められます。

    支援の内容は大きく2つに分かれます。法律で実施が義務付けられている「義務的支援」と、企業が任意で追加できる「任意的支援」です。まず義務的支援の8項目を確認しましょう。

    支援項目 主な内容 実施タイミング
    ①事前ガイダンス 就労条件・生活環境・入国手続きの説明 入国前(在留資格認定前)
    ②出入国時の送迎 空港からの送迎・在留資格取得の案内 入国時・帰国時
    ③適切な住居確保支援 住居の確保・不動産契約の支援 入国前後
    ④生活オリエンテーション 銀行開設・交通・医療・税務等の説明 入国後速やかに
    ⑤日本語学習支援 日本語教室・学習機会の情報提供 在留中を通じて
    ⑥相談・苦情対応 生活・職場に関する相談窓口の設置 在留中を通じて
    ⑦日本人との交流促進 地域行事参加・社内交流の機会提供 在留中を通じて
    ⑧定期面談・行政機関への通報 3ヶ月に1回以上の面談実施・問題発覚時の通報 3ヶ月ごと
    参考情報

    出入国在留管理庁「特定技能外国人支援に関する運用要領」によれば、義務的支援はすべての特定技能1号の受入れ企業に適用される。支援計画の内容が不十分であったり、計画通りに支援が実施されていない場合は、在留資格の更新が認められない可能性がある。

    重要ポイント

    支援計画は「文書として作成・提出」するだけでなく、実際に計画通りに支援を実施することが求められます。定期面談の記録・相談対応の記録・生活オリエンテーションの実施記録などを保管しておく必要があります。書類を整えただけで終わりにすることはできません。

    「自社支援」か「委託」か — 2つの選択肢の基本構造

    義務的支援の実施方法は、法律上2つの選択肢が認められています。

    1つ目は、雇用企業が自社で支援を実施する「自社支援」です。人事・総務担当者が支援計画を作成し、定期面談・相談対応・各種支援を自社で行います。体制さえ整っていれば、外部コストを抑えることができます。

    2つ目は、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」に支援業務を委託する方法です。登録支援機関は特定技能外国人の支援を専業または兼業で行う事業者で、多言語対応や緊急連絡体制など支援のインフラが整っています。委託費用は発生しますが、自社の負担を大幅に軽減できます。

    行政書士と登録支援機関の役割の違い

    混同されやすいですが、行政書士と登録支援機関は担当する業務が根本的に異なります。
    行政書士:在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更申請など「入管への申請手続き」を代行する専門家です。
    登録支援機関:外国人が入国した後の「生活・就労の支援業務」を担う事業者です。
    多くの場合、申請は行政書士に依頼し、入国後の支援は登録支援機関に委託するという形で両者を組み合わせて活用します。

    自社支援が可能かどうかを判断するチェックリスト

    自社支援の基準を確認する担当者のイメージ

    自社支援を選択するためには、出入国在留管理庁が定める「支援実施の適格性」の基準を満たす必要があります。以下のチェックリストで自社の体制を確認してください。

    • 過去2年以内に中長期在留外国人(技能実習生や就労ビザ外国人など)の適正な在留管理・雇用管理の実績がある
    • 義務的支援の8項目をすべて自社で実施できる人員・時間的余裕がある
    • 外国人本人と共通言語(日本語または母国語)で相談・苦情対応ができる担当者がいる
    • 3ヶ月に1回以上の定期面談を継続的に実施し、記録を管理できる体制がある
    • 問題発覚時に出入国在留管理庁・労働基準監督署等への通報義務を理解している担当者がいる
    • 空港送迎・住居確保・生活オリエンテーション等を実際に担当できる体制がある

    注意点

    チェックが入らない項目が複数ある場合、自社支援での申請が認められないか、または承認後に支援計画の実施が困難になるリスクがあります。特に「外国人採用が初めて」という企業の場合、実績要件を満たせず自社支援の基準に達しないケースが多くあります。

    以前、当事務所にこんなご相談が届きました。食品製造業を営む30名規模の中小企業の総務担当者からのお問い合わせです。

    「特定技能の採用を検討しているのですが、自社でも支援できると聞きました。初めての外国人採用でも自社支援にすれば委託費用が節約できると思っているのですが、可能でしょうか。」

    このケースでは、外国人雇用の実績が全くなかったため、自社支援の基準(過去2年以内の在留管理実績)を満たすことができませんでした。また、定期面談を担当できる多言語スタッフもいませんでした。「節約したい」という気持ちは理解できますが、体制なき自社支援は支援計画の不備として審査に影響するリスクがあります。最終的にこの企業は登録支援機関に委託しつつ、翌年の更新時に自社支援への移行を目指すという方向で進めることになりました。

    登録支援機関に委託するメリットと注意点

    自社支援の基準が整っていない場合や、担当者の負担を抑えたい場合は、登録支援機関への委託が現実的な選択肢です。メリットと注意点を整理します。

    委託のメリット

    • 義務的支援8項目を一括して任せられる
    • 多言語対応・緊急連絡体制などのインフラが整っている
    • 定期面談・記録管理などの実務負担を軽減できる
    • 外国人採用実績がなくても申請を進めやすい
    • 支援漏れによる在留資格リスクを低減できる

    委託の注意点

    • 月2〜5万円/人のランニングコストが発生する
    • 「丸投げ」によって外国人の状況把握が薄くなりやすい
    • 質の低い機関に委託すると支援が名目上に留まりやすい
    • 雇用企業としての管理責任はなくならない
    • 対応言語・国籍の不一致で支援の質が低下するリスク

    委託後も企業の責任は残ります

    登録支援機関に委託した場合でも、在留資格の管理責任・労働関係法令の遵守義務は雇用企業に帰属します。支援機関に「すべて任せた」という認識は危険です。定期的に支援の実施状況を確認し、外国人本人からも直接話を聞く機会を持つことが重要です。

    登録支援機関の選び方 — 4つの判断基準

    登録支援機関を比較・選定するイメージ

    登録支援機関は出入国在留管理庁に登録した事業者であれば誰でも名乗れるため、質のばらつきが大きい業種でもあります。以下の4つの基準で比較・選定することをお勧めします。

    選定基準 確認すべきポイント チェック方法
    ①対応言語・国籍 採用予定の外国人の母国語で対応できるか 初回問い合わせ時に対応言語一覧を確認
    ②支援実績・経験 採用予定の業種・国籍での実績があるか 実績件数・過去の支援事例を書面で確認
    ③支援内容の詳細 義務8項目のすべてが明記されているか サービス内容明細書・契約書を事前に確認
    ④行政書士との連携 在留資格申請サポートも一体で提供できるか 提携行政書士の有無を確認

    費用相場と価格の見方

    登録支援機関の委託費用の相場は月2〜5万円/人程度です。月2万円を下回る「格安」機関は、定期面談を実施しない・書類作成のみ対応・実質的な支援が行われないケースが報告されています。一方、5万円超の機関が特別に優れているわけでもありません。価格より「支援内容の明細」を比較することが最重要です。見積もりを取る際は「定期面談の実施方法と記録管理の方法」を必ず確認してください。

    行政書士が見た — 登録支援機関選びの失敗事例

    当事務所では、登録支援機関を巡るトラブル相談も少なくありません。特に多いのが「格安の機関を選んだ結果、実質的な支援が行われていなかった」というケースです。

    「月1.5万円の登録支援機関と契約したのですが、最初の書類作成後は連絡がほとんどなく、面談もやっていないようです。在留資格の更新申請のときに問題が起きないか不安で…」

    これは関東圏の製造業(従業員約50名)の総務担当者からのご相談です。在留資格認定申請時に書類作成を手伝ってもらった登録支援機関と、そのまま支援委託契約を結んだものの、入国後の支援がほぼ機能していませんでした。

    義務的支援の不実施は在留資格の更新审査に影響します。このケースでは、面談記録・生活支援の実施記録がほとんど残っていなかったため、更新申請の前に急いで記録を整備しなおす対応が必要になりました。登録支援機関との再交渉も含め、約2ヶ月の対応が発生しました。

    この事例の教訓

    登録支援機関との契約は、在留資格申請の書類作成サポートと「入国後の継続的な支援業務」は別物です。書類作成だけしてもらった機関と、そのまま支援委託契約を結ぶのは危険です。支援業務を委託する前に、「毎月・毎四半期に何を実施してくれるか」を明記した契約書を取り交わすことが不可欠です。

    よくある質問(FAQ)

    Q登録支援機関への委託は義務ですか?

    A

    委託は義務ではありません。支援業務を自社で実施できる体制があれば「自社支援」を選択できます。ただし自社支援には出入国在留管理庁が定める「支援実施の適格性」の基準を満たす必要があります。主に「過去2年以内の中長期在留外国人の適正管理実績」が求められるため、外国人採用が初めての企業では基準を満たせないことが多く、その場合は登録支援機関への委託が現実的な選択です。

    Q委託した場合、企業に残る義務は何ですか?

    A

    登録支援機関に委託しても、雇用企業としての義務は残ります。具体的には、外国人が従事する業務内容・労働条件が在留資格の内容に合致しているかの管理、在留期間の把握と更新申請の準備、雇入れ・離職時の届出義務などは企業が直接行う必要があります。支援業務を委託することで「支援計画の実施責任」を機関に移転できますが、雇用主としての管理責任は残ります。

    Q登録支援機関の費用は全額企業が負担するのですか?

    A

    支援費用は原則として雇用企業が負担します。外国人本人に費用を転嫁することは、特定技能の運用ルール上認められていません。月2〜5万円/人が相場です。5名採用した場合、月10〜25万円程度のランニングコストが発生することになります。採用計画を立てる段階でこのコストを試算に組み込んでおくことが重要です。

    まとめ

    特定技能1号を雇用する企業には、義務的支援8項目の実施が法律上求められます。この支援業務は「自社支援」か「登録支援機関への委託」のいずれかで対応することになりますが、自社支援には一定の体制・実績要件が必要であることを忘れてはなりません。

    • 自社支援は「過去2年以内の在留管理実績」「多言語相談対応体制」「定期面談の実施体制」が揃っている場合に選択できる。外国人採用が初めての企業は多くの場合、登録支援機関への委託が必要
    • 登録支援機関に委託しても雇用企業の管理責任は残る。委託後も実施状況を定期的に確認し、面談記録を保管しておくこと
    • 登録支援機関の選定は価格だけでなく「対応言語・実績・支援内容の明細」で比較する。契約前に支援内容を書面で確認することが失敗を防ぐ最大のポイント
    特定技能の登録支援機関まとめ

    「自社で支援できる体制かどうか判断したい」「登録支援機関の選定を一緒に考えてほしい」「申請から支援体制の構築まで一括でサポートしてほしい」——このようなご要望がある場合は、ぜひ当事務所(池袋行政書士事務所 リライアンス東京)にご相談ください。初回相談は無料で承っております。貴社の体制・採用予定人数・国籍に応じて、最適な支援体制の選び方をご提案します。

    井崎忠弘

    この記事を書いた人

    井崎 忠弘行政書士

    リライアンス東京行政書士事務所の代表行政書士。就労ビザ申請取次・相続・会社設立など幅広い業務に対応。依頼者に寄り添い、わかりやすい説明を心がけています。