特定技能ビザの転職手続き完全ガイド|旧職場・新職場・本人の手続きを三者別に整理

目次

    「うちの特定技能の外国人スタッフが転職したいと言っているんですが、何か手続きが必要ですか?」

    こうした相談は、特定技能外国人を受け入れている企業の担当者からよくいただきます。採用・受入れの手続きに比べ、退職・転職時の手続きは見落とされがちですが、旧職場にも新職場にも、そして外国人本人にも、入管への届出義務があります。

    「届出の期限はいつまで?」「在留資格の変更は必要?」「転職先が決まるまでの空白期間はどうなる?」——この記事では、これらの疑問に実務目線でお答えします。

    この記事でわかること

    • 特定技能ビザで転職できるかどうかの基本ルール(同一分野・異分野の違い)
    • 旧職場(退職後の受入機関)が行うべき手続きと期限
    • 新職場(新しい受入機関)が行うべき手続きと期限
    • 外国人本人が行うべき届出の内容
    • 転職中の空白期間に発生するリスクと対処法

    筆者は池袋行政書士事務所「リライアンス東京」の行政書士です。特定技能・就労ビザの申請サポートを専門に行っており、転職に関する相談も数多く手がけてきた経験から、企業担当者が実務で迷いやすいポイントを絞って解説します。

    まず確認|特定技能ビザで転職は原則できる

    特定技能ビザ(在留資格「特定技能」)は、特定の産業分野での就労を認める在留資格です。そのため、転職の可否は「転職先の業務が同じ分野かどうか」によって大きく変わります。

    転職のパターン 在留資格の変更 必要な手続き
    同一分野への転職
    (例:製造業→製造業)
    不要 旧職場・新職場・本人それぞれの届出(14日以内)
    異なる分野への転職
    (例:製造業→飲食料品製造業)
    必要 在留資格変更許可申請+届出。許可が下りるまで新分野での就労不可

    同一分野内の転職であれば、在留資格を改めて申請し直す必要はありません。ただし、「届出不要」ではありません。旧職場も新職場も、14日以内に入管へ届け出る義務があります(入管法第19条の17)。この届出を怠ると届出義務違反となります。

    特定技能の対象分野(2026年時点)

    特定技能1号の対象は介護、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建築物清掃業、ビルクリーニング、警備業など19分野(2026年時点)です。転職先が同分野かどうかは、協議会や分野所管省庁の判断が必要なケースもあります。不明な場合は行政書士や入管に事前確認することをおすすめします。

    旧職場(退職後の受入機関)の手続き

    特定技能外国人が退職した場合、旧職場(それまでの受入機関)には、入管への届出義務が生じます。この届出は、外国人が退職した事実を入管に報告するためのものです。

    STEP 1 退職日を書面で確認する

    口頭での退職申し出だけで手続きを進めることは避け、退職届や退職合意書などで退職日を書面として確認・記録しておきましょう。後のトラブル防止にもなります。

    STEP 2 退職日から14日以内に入管へ届出

    退職した日(雇用終了日)から14日以内に、出入国在留管理庁への届出が義務付けられています(入管法第19条の17)。届出は、出入国在留管理庁の「在留申請オンラインシステム」または最寄りの入管窓口で行います。届出内容:外国人の氏名・在留カード番号・雇用終了年月日など。

    STEP 3 登録支援機関への連絡(委託している場合)

    外国人支援を登録支援機関に委託していた場合は、退職の事実を委託先の登録支援機関にも連絡します。支援委託契約の終了手続きや、支援計画の変更届出が必要になる場合があります。

    STEP 4 社会保険・労働保険の喪失手続き

    退職日から5日以内に健康保険・厚生年金保険の資格喪失届を提出し、雇用保険の資格喪失届も速やかに行います。外国人であっても社会保険・労働保険の加入・喪失手続きは日本人と同様です。

    14日以内の届出は義務|遅れると届出義務違反

    雇用終了から14日を超えても届出を行わないと、届出義務違反となります(入管法違反)。違反の内容によっては受入適格を失うリスクもあります。「退職の手続きに追われていて忘れた」では済まされません。退職日が確定した時点で、入管への届出を最優先事項として動いてください。

    新職場(新しい受入機関)の手続き

    特定技能外国人を新たに採用する新職場側にも、入管への届出義務をはじめとする手続きが発生します。「前の会社で特定技能ビザを持っていた人だから書類は少ないはず」と思われがちですが、受入機関としての義務は初回採用時と基本的に同じです。

    STEP 1 在留カード・パスポートで就労資格を確認する

    採用前に必ず在留カードを確認し、在留資格が「特定技能」であること、在留期限が有効であること、就労制限の有無を確認します。在留カードの「就労制限の有無」欄が「就労不可」となっていないかも要確認です。

    STEP 2 雇用条件書・特定技能雇用契約の締結

    新しい雇用条件(給与・勤務時間・業務内容等)を記載した雇用条件書を作成し、外国人本人との間で特定技能雇用契約を締結します。同等業務に従事する日本人と同等以上の報酬であることが必要です。

    STEP 3 支援計画の整備

    受入機関は、外国人への10項目の義務的支援(事前ガイダンス・住居確保支援・生活相談等)を実施する支援計画を整備する必要があります。自社で実施するか、登録支援機関に委託するかを決め、支援委託契約を締結します。転職であっても、支援計画の整備は必須です。

    STEP 4 雇用開始日から14日以内に入管へ届出

    外国人の雇用を開始した日から14日以内に、出入国在留管理庁へ届出を行います(入管法第19条の17)。届出内容:外国人の氏名・在留カード番号・雇用開始年月日・業務内容など。オンラインシステムまたは窓口で届出できます。

    STEP 5 協議会への加入状況を確認する

    受入機関は対象分野の協議会に加入する義務があります。新規加入が必要な場合は、雇用開始から4ヶ月以内に加入手続きを完了させてください。すでに同分野で協議会加入済みの場合は、追加手続き不要です。

    就労資格証明書でリスクを低減する方法

    特定技能外国人を採用する際、雇用開始前に「就労資格証明書」の取得を検討することをおすすめします。就労資格証明書とは、外国人が特定の会社・業務での就労が適法であることを入管が証明する書類です。取得義務はありませんが、証明書があることで採用後のトラブルや不法就労リスクを未然に防ぐことができます。取得には通常1〜3ヶ月かかるため、採用スケジュールに余裕を持たせてください。

    外国人本人の手続き

    転職の際は、外国人本人にも届出義務があります。企業担当者として、本人が適切に手続きを完了できるようサポートすることが重要です。

    所属機関の変更届出(14日以内)

    外国人本人は、所属機関(受入機関)が変わった場合、変更のあった日から14日以内に入管へ届出しなければなりません(入管法第19条の16)。この届出は、本人が住居地を管轄する入管または在留申請オンラインシステムで行います。

    届出が必要な内容:新しい所属機関の名称・所在地、活動の内容(業務内容)、雇用開始日など。

    住居変更を伴う場合は住民票の異動も必要

    転職に伴い引越しする場合は、転入届・転出届も必要です。新住所に転入してから14日以内に、新住所の市区町村役場に転入届を提出してください。住居変更後は在留カードの住所欄も更新されます(役場で手続き)。

    転職先が決まっていなくても届出は必要

    退職した時点で転職先が未定であっても、外国人本人は退職日から14日以内に「所属機関に関する届出(退職)」を入管に行う義務があります。「転職先が決まってから一緒に届け出ればいい」という考えは誤りです。退職の届出と、新しい転職先への就職の届出は、それぞれ別々に、それぞれの期限内に行う必要があります。企業担当者として、本人にこの点を明確に伝えてください。

    相談事例|異なる分野への転職で在留資格変更が必要になったケース

    特定技能外国人の転職に関して、私が実際に受けた相談をもとに、注意すべきケースをご紹介します。

    「製造業で特定技能ビザを持っているスタッフから、友人が働いているレストランに転職したいと相談を受けました。すぐに採用したいと言われたのですが、手続きはどうすればいいですか?」

    これは、製造業の特定技能外国人が飲食業(外食業)への転職を希望したケースです。一見、同じ「特定技能」在留資格を持っていれば問題なさそうに見えますが、この場合は「在留資格変更許可申請」が必要です。

    理由は、製造業と外食業は特定技能の「分野」が異なるためです。特定技能の在留資格は分野ごとに許可されるため、異なる分野で働くには在留資格を新たに取得し直す必要があります。

    在留資格変更許可が下りる前の就労開始は「不法就労」

    在留資格変更許可申請中であっても、新しい分野での就労は許可が下りるまで一切できません。「申請中だから大丈夫」という判断は誤りであり、許可前に就労させた企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。採用スケジュールは、在留資格変更の許可日を基準に立てるようにしてください。

    この事例では、在留資格変更許可申請の準備・提出から許可取得まで約2ヶ月かかりました。採用を急ぐあまり許可前に就労を開始してしまうケースが実務上少なくないため、転職先の業種を確認した段階で早めに専門家に相談することをおすすめします。

    転職中の空白期間リスク

    特定技能の在留資格は、退職しても即座に消えるわけではありません。在留期限内であれば、在留資格は継続します。しかし、就労しない状態が長期間続くと、重大なリスクが生じます。

    入管法第22条の4第1項では、正当な理由なく特定技能の在留資格に基づく活動を3ヶ月以上行っていない場合、在留資格が取り消されることがあると定められています。転職活動中であっても、3ヶ月を超えて就労空白が続く場合は注意が必要です。

    長期の転職活動は在留資格取消リスク

    「転職先が見つかるまで待てばいい」という考えは、外国人本人にとって大きなリスクになります。3ヶ月という期間はあくまで目安であり、個別の事情によって入管の判断は異なります。転職活動期間が長引く場合は、積極的に求職活動をしていることを証明できるよう記録を残しておくことが重要です。また、旧職場の担当者として、退職する外国人スタッフにこのリスクを事前に伝えることも、雇用者としての配慮といえます。

    受入企業の担当者が直接関わる話ではありませんが、退職する外国人スタッフに対して「転職先を早期に確保する重要性」と「届出義務の期限」をきちんと伝えることが、トラブル防止につながります。

    よくある質問

    特定技能ビザの転職手続きに関して、よくいただくご質問にお答えします。

    Q同じ会社内での部署異動や業務変更は届出が必要ですか?

    A

    同じ会社内での部署異動・担当業務の変更であっても、特定技能で許可された分野の範囲内の業務であれば、届出は不要です。ただし、許可された分野を逸脱した業務を行わせる場合は問題になります。業務内容に大きな変更がある場合は、事前に行政書士または入管に確認することをおすすめします。

    Q在留資格変更申請中でも、以前の分野(旧職場と同じ分野)では働けますか?

    A

    はい、在留資格変更申請中であっても、以前許可されていた分野での就労は継続できます。ただし、変更申請している新しい分野での就労は、許可が下りるまで一切できません。異分野への転職時は、旧分野での業務を継続しながら許可を待つというスケジュールを立てることが重要です。

    Q転職後の届出を期限内に行わなかった場合、どうなりますか?

    A

    受入機関が14日以内の届出を怠った場合、入管法の届出義務違反となります。重大な違反として認定された場合、受入適格を失うリスクがあります。また、外国人本人が届出を怠った場合も、在留管理の観点から問題となります。「うっかり忘れた」では済まない場合もあるため、退職日・採用日を確認した時点で届出のスケジュールを管理することが大切です。

    まとめ

    特定技能ビザの転職手続きのポイントをまとめます。

    • 同一分野への転職は在留資格変更不要。届出(14日以内)のみで対応できる
    • 旧職場・新職場ともに雇用終了日・開始日から14日以内に入管へ届け出る義務がある。遅れると届出義務違反
    • 異なる分野への転職は在留資格変更許可申請が必要。許可前の新分野での就労は不法就労になる
    • 外国人本人にも届出義務あり。転職先が未定でも退職の届出は14日以内に行う
    • 転職中の就労空白が3ヶ月以上続くと在留資格取消リスクがある
    特定技能ビザ転職手続きガイド

    「うちのスタッフが転職したい」「特定技能の外国人を転職採用したい」という場面では、やるべき手続きと法的リスクを正確に把握したうえで動くことが大切です。手続きに不安がある場合や、分野が変わるケースで在留資格変更が必要な場合は、早めに専門家にご相談ください。

    池袋行政書士事務所「リライアンス東京」では、特定技能ビザに関わる転職手続き・在留資格変更申請のサポートを承っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

    井崎忠弘

    この記事を書いた人

    井崎 忠弘行政書士

    リライアンス東京行政書士事務所の代表行政書士。就労ビザ申請取次・相続・会社設立など幅広い業務に対応。依頼者に寄り添い、わかりやすい説明を心がけています。