特定技能ビザの試験要件を採用担当者向けに解説|技能試験・日本語試験・免除条件

目次

    特定技能ビザの試験要件を採用担当者が確認しているイラスト

    「この候補者、試験は合格しているって言っているけれど、本当に申請できる状態なのかな?」

    特定技能外国人の採用を進めているとき、採用担当者が一番悩むのが試験要件の確認です。特定技能ビザには「日本語試験」と「技能試験」の2種類が必要で、分野によって実施機関も異なります。候補者の合格状況を正確に把握しないまま採用を決定すると、いざ申請の段階で「合格証明書が期限切れ」「試験を受けていない分野の試験だった」といった事態が起こりえます。

    この記事では、特定技能ビザの試験要件について、採用担当者が実務で使える情報に絞ってわかりやすく解説します。

    この記事でわかること

    • 特定技能ビザに必要な試験の種類(日本語試験+技能試験)
    • 日本語試験の選び方:JFT-BasicとJLPTの違い
    • 分野別の技能試験名と実施機関の調べ方
    • 試験免除の条件と確認すべき書類
    • 合格証明書の有効期限と採用前チェックのポイント

    筆者は池袋行政書士事務所(リライアンス東京)の代表行政書士です。特定技能の在留資格申請を専門に取り扱っており、採用前の試験確認でつまずいた企業担当者からのご相談を数多くいただいてきた経験から、実務的なポイントを解説します。

    特定技能ビザの試験は日本語試験と技能試験の2種類が必要

    特定技能ビザの試験要件は「2種類のセット」

    特定技能ビザ(特定技能1号)を取得するには、原則として日本語試験と技能試験の両方に合格していることが求められます。どちらか一方だけでは申請できません。

    日本語試験の役割

    日本語試験は、採用後に現場で働くうえで最低限必要なコミュニケーション能力があるかを確認するものです。業務内容にかかわらず、すべての分野で共通して必要とされます。ただし、後述する免除要件に該当する場合は受験が不要です。

    技能試験の役割

    技能試験は、採用しようとしている分野の業務を行うための知識・技能があるかを確認するものです。分野ごとに異なる試験が設定されており、実施機関も分野によって変わります。採用を予定している業種で、どの試験が必要かを事前に確認することが重要です。

    2種類セットが原則

    特定技能ビザの試験は「日本語試験」と「技能試験」の両方合格が申請の前提条件です。ただし、技能実習2号を良好に修了した者など、免除要件に該当する場合はどちらか、または両方の試験が不要になります。

    参考情報

    特定技能1号の試験要件は、出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」および各分野の省庁が定めた「分野別運用方針」に規定されています。詳細は出入国在留管理庁の公式サイトでご確認ください。

    JFT-BasicとJLPTの比較図解

    日本語試験|JFT-BasicとJLPTの違いと選び方

    特定技能ビザの日本語試験には2種類があります。候補者がどちらを受けているかによって、手続きに必要な書類が異なります。

    JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の概要

    JFT-BasicはCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA2レベル以上に相当する日本語能力を測る試験です。コンピュータを使ったCBT方式で実施されるため、受験機会が多く、月に複数回実施されている国・地域もあります。海外在住の候補者が受験しやすい試験として広く活用されています。

    試験会場はアジア・中東・中南米を中心に世界各地に設置されており、日本国内でも一部会場で受験できます。合格スコアはA2以上で、合否はスコアレポートで確認できます。

    JLPT(日本語能力試験)N4以上の概要

    JLPTは読む・聞くの能力を測る試験で、N1〜N5の5段階のうちN4以上が特定技能の要件です。N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルとされています。年2回(7月・12月)開催され、国内107都市・海外85ヵ国で受験できます。

    N4以上の合格証明書(有効期限なし)を持っている場合、JFT-Basicの受験は不要です。ただし、特定技能の申請時にはJLPT合格証明書(有料発行)を取得し添付する必要があります。合格通知書とは別の書類なので、注意が必要です。

    採用担当者としての選び方ポイント

    どちらの試験を受けているかは候補者が選択するものですが、採用担当者として知っておきたい違いは次のとおりです。

    比較項目 JFT-Basic JLPT N4以上
    実施機関 国際交流基金(JF) 国際交流基金・日本国際教育支援協会
    試験方式 CBT(コンピュータ) 筆記(マークシート)
    実施頻度 月複数回(国により異なる) 年2回(7月・12月)
    実施地域 海外中心(一部国内も可) 国内107都市・海外85ヵ国
    合格証明書の有効期限 合格日から2年間 有効期限なし
    スコア証明書の取得 スコアレポート(試験後に発行) 合格証明書(有料・申請が必要)

    JFT-Basicの合格は2年で失効する

    JFT-Basicの合格には有効期限(合格日から2年間)があります。合格から時間が経った候補者の場合、申請時点で有効期限が切れていないかを必ず確認してください。「合格した」という事実だけでなく、スコアレポートの日付まで確認することが重要です。期限切れの場合、再受験が必要になります。

    採用担当者が技能試験の合格証明書を確認しているイラスト

    技能試験|分野ごとの試験名と実施機関の確認方法

    技能試験は採用しようとしている業種(分野)によって異なります。自社の業種がどの分野に該当し、どの試験が必要かを最初に確認することが、採用実務の第一歩です。

    主要分野の技能試験一覧

    以下は特定技能1号の主要分野における技能試験の一覧です。

    分野 試験名 主な実施機関
    介護 介護技能評価試験 公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)
    ビルクリーニング ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 一般社団法人 全国ビルメンテナンス協会
    素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 製造分野特定技能1号評価試験 一般社団法人 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会
    建設 建設分野特定技能1号評価試験 一般財団法人 建設業振興基金
    造船・舶用工業 造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験 一般財団法人 日本海事協会
    自動車整備 自動車整備分野特定技能評価試験 一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会
    宿泊 宿泊業技能測定試験 一般社団法人 宿泊業技能試験センター
    農業 農業技能測定試験 一般社団法人 農業技能評価機構
    漁業 漁業技能測定試験 一般社団法人 大日本水産会
    飲食料品製造業 飲食料品製造業技能測定試験 一般社団法人 外食産業技能評価機構
    外食業 外食業技能測定試験 一般社団法人 外食産業技能評価機構

    CBT方式と試験会場の概要

    多くの技能試験はCBT方式(コンピュータを使った試験)で実施されており、国内外の指定会場で受験できます。一部の試験は海外にも会場が設けられており、来日前に合格している候補者も多くいます。

    試験日程の確認方法

    試験の日程は各実施機関が公式サイトで公表しています。試験によって実施頻度が異なり、年数回のものから月複数回実施されるものまでさまざまです。候補者の試験予定を確認する際は、上表の実施機関の公式サイトで最新日程を確認するよう候補者に案内してください。

    参考情報

    各分野の技能試験情報は、出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れ及び在留管理に関する基本計画」および各所管省庁(厚生労働省・国土交通省・農林水産省等)の公式サイトでご確認いただけます。試験日程の最新情報は各実施機関の公式サイトを参照してください。

    試験書類の確認で困っている採用担当者

    行政書士が見た「試験確認ミスで詰まった相談事例」

    特定技能ビザの申請準備を進めている企業担当者から、こんなご相談をいただいたことがあります。

    「採用を決めた外国人スタッフの合格証明書をよく見たら、JFT-Basicの合格日から2年以上経っていました。本人は『試験に合格した』と言っていたので信じていたのですが、有効期限があるとは知りませんでした。申請できないのでしょうか?」

    このご相談のケースでは、JFT-Basicの合格証明書の有効期限(2年間)が切れていたため、このままでは申請書類として使用できない状態でした。幸い、候補者はすぐに再受験することができ、合格後に申請を進めることができましたが、採用のスケジュールが2ヶ月以上遅れました。

    試験に「合格している」ことは確認していても、合格証明書の有効期限まで確認していないケースは少なくありません。採用を内定する前の段階で、有効期限まで確認することが重要です。

    採用決定前に確認すべき3つのポイント

    • 候補者が合格した試験名(自社の分野と一致しているか)
    • 合格証明書の日付(JFT-Basicは2年以内か)
    • 技能実習2号修了の場合は修了証明書の内容(分野が一致しているか)

    試験免除の条件|技能実習2号修了者は確認が必須

    技能実習2号を「良好に修了」した者は、日本語試験と技能試験の両方が免除されます。これは特定技能制度の大きな特徴のひとつで、技能実習からスムーズに特定技能へ移行できる仕組みです。

    ただし、免除が認められるためには以下の条件が必要です。

    • 技能実習2号を修了していること(1号修了だけでは免除されない)
    • 良好に修了していること(技能実習の途中で失踪・問題がないこと)
    • 技能実習で従事した分野・業務と、特定技能で従事しようとする分野が一致すること

    「2号修了」でも免除されないケース

    技能実習2号を修了していても、技能実習の分野と特定技能の分野が異なる場合は免除されません。例えば、農業の技能実習2号を修了した者が飲食料品製造業で特定技能として働く場合、改めて飲食料品製造業の技能試験への合格が必要です。採用予定の業務内容と技能実習での従事内容が一致しているかを必ず確認してください。

    技能実習修了者に必要な確認書類

    技能実習修了者の免除を適用するためには、申請書類に以下の書類を添付する必要があります。

    • 技能実習修了証明書(技能実習2号良好修了)
    • 技能実習計画の認定通知書または実習実施記録(分野・業務内容を確認するため)

    候補者本人が修了証明書を保管していない場合は、旧・技能実習機構(現・外国人技能実習機構)または前の受け入れ先企業に問い合わせて再発行を依頼する必要があります。採用決定後にこの手配が必要になると、申請スケジュールが大幅に遅れる場合があります。

    採用前チェックリスト|試験要件の確認ステップ

    採用候補者が試験要件を満たしているかを確認するための手順を整理します。採用内定前に以下のステップで確認しましょう。

    STEP 1 分野の確認

    採用しようとしている業務が、特定技能のどの「分野」に当たるかを確認します。製造業の場合でも「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」「食料品製造業」など複数の分野に分かれているため、正確な分野の特定が第一歩です。

    STEP 2 候補者が試験免除かを確認

    候補者が技能実習2号を修了しているか確認します。修了している場合は、修了した分野と採用しようとしている分野が一致するかをチェックします。一致していれば試験は不要です。一致しない場合はSTEP 3へ進みます。

    STEP 3 試験合格証明書の確認

    免除に該当しない候補者については、日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)と技能試験の両方の合格証明書を提示してもらいます。JFT-Basicは合格日から2年以内かを必ず確認します。JLPTは有効期限がありませんが、申請には合格証明書(別途有料取得)が必要です。

    STEP 4 書類を申請用に整える

    確認が取れたら、各試験の合格証明書を申請書類セットに組み込みます。JFT-Basicはスコアレポートの原本、JLPTは合格証明書、技能試験は各実施機関発行の合格証明書を用意します。コピーが認められる書類とそうでない書類があるため、行政書士に事前確認することを推奨します。

    よくある質問

    QJFT-Basicの有効期限が切れた場合、再受験は必要ですか?

    A

    はい、再受験が必要です。JFT-Basicの合格は合格日から2年間有効で、有効期限が切れると申請書類として使用できません。申請予定日から逆算して有効期限が切れていないかを必ず確認し、期限切れの場合は再受験を手配してください。なお、JLPTのN4以上は有効期限がないため、こちらは期限切れの心配はありません。

    Q海外在住の候補者は日本国内で試験を受けてから来日する必要がありますか?

    A

    必ずしも来日前に受験する必要はありません。JFT-BasicやJLPTは海外でも受験できます。また、技能試験も一部分野では海外に試験会場が設けられています。ただし、海外でどの試験が受験可能かは実施機関のサイトで確認が必要です。日本国内での受験を希望する場合は、短期滞在ビザなどで来日して受験することも可能です。

    Q技能実習1号修了者は試験免除になりますか?

    A

    なりません。試験免除は「技能実習2号を良好に修了した者」に限られます。技能実習1号の修了だけでは免除の対象外となり、日本語試験・技能試験の両方が必要です。技能実習1号を修了した候補者を採用する場合は、両方の試験合格を前提に採用スケジュールを組んでください。

    QJLPT N3を持っていれば、JFT-Basicや技能試験は免除になりますか?

    A

    JFT-Basicについては、JLPT N4以上を持っていれば受験は不要です(N3はN4以上なので要件を満たします)。ただし、技能試験は日本語試験とは別の要件であり、日本語能力が高くても技能試験の免除にはなりません。技能試験の免除は、対応する技能実習2号の良好修了か、所定の国家資格等の取得に限られます。

    特定技能ビザの試験要件について、採用担当者が押さえるべきポイントをまとめます。

    • 特定技能ビザには「日本語試験」と「技能試験」の両方の合格が原則必要。技能実習2号を同分野で良好修了した場合は両方免除
    • 日本語試験はJFT-Basic(有効期限2年)またはJLPT N4以上(有効期限なし)。JFT-Basicは採用決定前に有効期限の確認が必須
    • 技能試験は採用分野ごとに異なる。自社の業種に対応する試験名と実施機関を確認し、候補者の合格証明書が一致しているかを確認する

    試験確認のミスは採用スケジュールを大幅に遅らせることがあります。不安な点は、申請手続きに入る前に専門家に確認することをお勧めします。

    池袋行政書士事務所(リライアンス東京)では、特定技能の在留資格申請を専門に取り扱っています。「この候補者で本当に申請できるか確認したい」といったご相談から承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

    井崎忠弘

    この記事を書いた人

    井崎 忠弘行政書士

    リライアンス東京行政書士事務所の代表行政書士。就労ビザ申請取次・相続・会社設立など幅広い業務に対応。依頼者に寄り添い、わかりやすい説明を心がけています。