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「ホールスタッフが足りない」「調理補助の求人を出しても応募がない」——飲食業界でこうした悩みを抱える経営者・人事担当者は後を絶ちません。
国内の若年労働力の減少が続く中、外国人材の活用は飲食業でも避けて通れないテーマになっています。しかし「技能実習は管理が大変」「就労ビザは難しそう」と感じて、踏み出せていない方も多いのではないでしょうか。
そこで注目されているのが、特定技能ビザの「外食業」分野です。2019年の制度開始以来、飲食店での活用事例は着実に増えており、適切に手続きを進めれば即戦力の外国人スタッフを通年で安定採用できます。
この記事では、外食業の業務範囲・対象業態・技能試験・飲食店側が整えるべき受入体制まで、行政書士の視点から実務に即して解説します。
この記事でわかること
- 特定技能ビザ「外食業」で外国人スタッフに任せられる業務の範囲
- 「うちの店は対象か」を判断するための業態別の整理
- 技能試験・日本語試験の内容と試験免除になるケース
- 飲食店が採用前に整えるべき5つの条件
- よくある誤解・失敗パターンとその回避策
筆者は池袋を拠点に外国人在留資格専門の行政書士として、飲食業・外食チェーン・居酒屋など多くの飲食店の特定技能受入支援を行っています。相談の現場で繰り返し出てくる「誤解」や「落とし穴」を中心にお伝えします。
特定技能ビザの「外食業」とは?業務範囲を正確に理解する
特定技能ビザの「外食業」分野は、農林水産省が所管する在留資格で、飲食サービス業全般における即戦力の外国人材を確保するための制度です。2019年4月の制度創設から現在まで、飲食業での活用が最も進んでいる分野のひとつです。
外食業分野で認められる業務は大きく3つに分類されます。
| 業務カテゴリ | 具体的な業務内容 |
|---|---|
| 飲食物調理 | 食材の仕込み・切り込み、調理・加熱、盛り付け、食材の受け取り・在庫管理、衛生管理 |
| 接客・ホール業務 | 注文受付・料理提供、テーブルセッティング・片付け、会計・レジ操作、案内・予約対応 |
| 店舗管理 | 開店・閉店作業、清掃・洗浄、食材発注・検品、スタッフへの指示・補助 |
重要なのは、「調理だけ」「接客だけ」という限定はなく、飲食店業務全般にわたって従事できる点です。日本人スタッフと同じ内容の仕事を任せることができるため、実際の店舗運営に即した活用が可能です。
農林水産省「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」では、外食業分野の業務を「飲食物調理、接客、店舗管理」と定義しており、これらに付随する業務も含まれるとされています。
「うちの店は対象?」業態別に整理する対象・対象外
「特定技能ビザ 外食業」という名称から、すべての食に関わる仕事が対象と誤解されることがあります。しかし実際には、日本標準産業分類上の「飲食店」に該当する業態が対象です。
| 業態 | 対象・非対象 | 注意事項 |
|---|---|---|
| レストラン・定食屋 | ◎ 対象 | 最も典型的な対象業態 |
| 居酒屋・バー・ダイニングバー | ◎ 対象 | 深夜業務も労基法の範囲で可能 |
| ファストフード・ファミレス | ◎ 対象 | チェーン店も直接雇用であれば対象 |
| カフェ・喫茶店 | ◎ 対象 | フードメニューがあれば問題なし |
| 宅配専業・デリバリー専門店 | ◎ 対象 | 調理・梱包業務が主業務であれば対象 |
| 社員食堂・社内給食(委託運営) | △ 要確認 | 飲食サービス業として登録している運営会社が雇用主であれば対象。施設所有企業が直接雇用する場合は要確認 |
| スーパーマーケットの惣菜部門 | × 対象外 | 「飲食料品製造業」分野に該当 |
| 食料品製造工場(弁当・総菜) | × 対象外 | 「飲食料品製造業」分野で別途申請が必要 |
注意点:業態の境界線は慎重に確認を
「弁当の製造と販売を兼ねている」「テイクアウト専門でイートインスペースがない」など、業態が複合している場合は外食業に該当するかどうかの判断が難しくなります。誤った分野で申請すると不許可になるため、不安な場合は申請前に専門家に確認することをお勧めします。
「調理専任で雇えると思っていた」——よくある誤解と実際のケース
先日、都内でイタリアンレストランを2店舗経営しているオーナーシェフの方からご相談をいただきました。
「パスタのポジションを担える外国人スタッフを採用したくて。でも特定技能って、調理だけに専念させるのは難しいと聞いたのですが本当ですか?ホールは日本人スタッフに任せたいんです」
この方は「外食業の特定技能は調理・接客・店舗管理の3業務をローテーションさせなければならない」と思い込んでいたのです。
実際には、特定技能外食業において「調理専任」で雇用することは問題ありません。業務範囲として3カテゴリが認められているのは「担当できる業務の幅が広い」ということであり、特定の業務のみを担当させることを禁じているわけではありません。
ただし、就労させる業務内容は雇用契約書・労働条件通知書に明記する必要があります。また、業務内容が「飲食物調理」の範囲内であることを在留資格申請書類でも示す必要があるため、書類作成の際に注意が必要です。
このオーナーの方は適切な書類整備のうえで申請を行い、ベトナム出身の調理担当スタッフ1名の採用に成功。その後2名目の採用も進めています。
この事例から学べること
特定技能外食業の「3業務カテゴリ」は担当できる業務の幅を示すもの。調理専任・ホール専任でも採用は可能です。重要なのは、実際に従事させる業務内容を雇用契約書と申請書類に正確に記載することです。
技能試験と日本語試験——飲食店が知っておくべきポイント
特定技能外食業の外国人を採用するためには、候補者が以下の試験に合格していることが必要です(または試験免除の条件を満たしていること)。
| 試験の種類 | 詳細 |
|---|---|
| 技能試験 外食業技能測定試験 |
実施機関:一般社団法人 外食業技能評価機構(OTAFF) 試験内容:衛生管理・食品安全・飲食物調理・接客サービス・店舗管理 試験形式:CBT方式(コンピュータ)の学科試験 実施場所:国内および海外(ベトナム・フィリピン・インドネシア等) |
| 日本語試験 (いずれか1つ) |
・国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2レベル以上 ・日本語能力試験(JLPT)N4以上 |
飲食店側にとって重要なのは、採用候補者がすでに試験に合格しているかどうかを事前に確認することです。試験合格証明書は在留資格申請書類のひとつとして提出が必要になります。
試験免除になるケース
外食業の技能実習2号を良好に修了した方は、技能試験・日本語試験のいずれも免除されます。すでに技能実習で外食業に携わった人材を引き続き採用・転籍採用したい場合は、試験なしで特定技能1号への移行が可能です。
試験の合否は採用後にわかることも
海外在住の候補者と採用合意をしても、その後の試験に合格できなければ就労できません。採用活動と試験スケジュールのタイミング管理は、特に海外採用の場合に重要な実務ポイントです。送出機関や登録支援機関と連携して、試験受験状況を適宜確認してください。
飲食店が採用前に整えるべき5つの条件
候補者の試験合格を確認したあとも、受入企業側の準備が整っていなければ在留資格申請が通りません。以下の5点を事前に確認・整備してください。
日本標準産業分類上の「飲食店」に該当する業種であることを確認します。法人登記・開業届・営業許可証の業種区分と照らし合わせてください。「食料品製造業」「スーパーマーケット」に分類されている場合は外食業分野では申請できません。
特定技能外国人への賃金は、同等の業務に従事する日本人スタッフと同等以上であることが必要です。時給・月給問わず、給与水準・手当・昇給の扱いを就業規則・賃金規程で明文化しておく必要があります。また、直接雇用(派遣不可)・フルタイム勤務(週所定労働時間が正社員と同等)が求められます。
注意点
「特定技能だから外国人に安く払える」は誤りです。賃金の不当な差別は特定技能制度の違反となり、受入資格の取り消しにつながります。
特定技能外国人を受け入れる企業には、法律で定められた「義務的支援」を実施する義務があります。
- 事前ガイダンス(在留資格・生活・業務内容の事前説明)
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活用品の情報提供
- 生活オリエンテーション(銀行・行政手続き等の案内)
- 日本語学習機会の提供
- 相談窓口の設置(母国語対応)
- 定期面談(3ヶ月ごと)と出入国在留管理庁への定期報告
これらをすべて自社で担うことが難しい場合、登録支援機関に委託することができます。月額2〜5万円程度が相場です。多くの飲食店が登録支援機関を活用しています。
外食業分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、農林水産省が運営する「外食業特定技能協議会」への加入が義務づけられています。受入開始後4ヶ月以内に加入する必要があります(加入費用は無料)。加入していない場合、次回以降の在留期間更新に影響が出る可能性があります。
在留資格「特定技能」の申請には多数の書類が必要です。主な必要書類は以下のとおりです。
- 在留資格変更(または認定証明書交付)申請書
- 特定技能雇用契約書・労働条件通知書
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 技能試験・日本語試験の合格証明書
- 受入機関の概要書・役員の住民票等
- 税務・社会保険関連の納付証明書
書類の不備・記載ミスが不許可や審査遅延の原因になるため、特定技能に精通した行政書士に作成を依頼することをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q深夜の居酒屋でも特定技能外国人を雇えますか?
雇用できます。深夜業務を行わせること自体は特定技能制度上の禁止事項ではなく、労働基準法・深夜割増賃金等の規定を守ることが前提です。深夜22時以降の労働には25%以上の深夜割増が必要である点を忘れずに給与計算に反映させてください。
Q特定技能外国人に料理長・店長を任せることはできますか?
特定技能1号は「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務」への従事が前提です。料理長・店長のポジションへの昇格自体は禁止されていませんが、「店長として経営判断・採用決定を行う」などの高度な管理業務は特定技能の業務範囲を超える可能性があります。実態に合わせて雇用契約書の業務内容を整理したうえで、専門家に確認することをお勧めします。
Q試験に合格した人はどこで探せますか?
主な採用ルートは3つあります。①国内在住の外国人(在留中に試験合格した方)をハローワーク・求人サイト・人材紹介会社で探す、②技能実習を修了した外国人の転籍採用、③海外から送出機関経由で採用する、です。急ぎの採用であれば国内在住者を探すルートが現実的で、中長期での採用計画には海外採用も有効です。
Q技能実習生と特定技能外国人の違いは何ですか?
技能実習は「国際技能移転・国際貢献」を目的とした制度で、転職は原則不可・受入に実習計画の認定が必要です。特定技能は「国内の人手不足解消」を目的とした就労制度で、同じ業種・分野内であれば転職可能です。特定技能のほうが企業・外国人双方に自由度が高く、より実態に即した雇用関係を築けます。
Q採用・手続きにかかる費用・期間の目安は?
費用は採用ルートによって大きく異なります。国内採用(在留資格変更)の場合、行政書士費用10〜20万円・登録支援機関月次費用2〜5万円が主な費用です。海外採用(認定証明書交付)の場合は送出機関費用20〜40万円・渡航費用5〜15万円が加わります。申請から許可まで通常1〜3ヶ月かかりますが、書類不備があると追加で数ヶ月かかるケースもあります。
まとめ
特定技能ビザの「外食業」は、飲食業界の慢性的な人手不足に対応できる即戦力採用の制度です。調理・接客・店舗管理のすべてに対応できる柔軟な人材を、通年で安定採用できる点が最大のメリットです。
- 外食業の業務範囲は「飲食物調理・接客・店舗管理」の全般。調理専任・ホール専任での採用も可能
- 対象は日本標準産業分類上の「飲食店」。スーパー惣菜・食料品製造は別分野で要確認
- 候補者は外食業技能測定試験+日本語試験に合格が必要(技能実習2号修了者は免除)
- 受入企業は直接雇用・同等賃金・義務的支援・協議会加入の4点が最低条件
- 書類不備による不許可・審査遅延を防ぐため、申請は専門家への依頼が現実的
「うちの店は対象になるか」「どんな人材を採用できるか」など、最初の一歩に迷っている段階でのご相談でも歓迎します。池袋を拠点に外国人在留資格を専門とするリライアンス東京の行政書士が、貴店の状況に合わせて具体的なアドバイスをいたします。