特定技能ビザのビルクリーニング分野とは?採用前に押さえるべき要件と実務ポイント

目次

    「清掃スタッフの人手不足が慢性化していて、特定技能ビザで外国人を採用したいが、何から始めればよいかわからない」——ビルメンテナンス会社の採用担当者・経営者の方から、こうした相談を受ける機会が増えています。

    特定技能ビザのビルクリーニング分野は、試験制度が整備されており、比較的採用しやすい分野のひとつです。しかし、採用前に満たすべき要件・受入れ後の支援義務・協議会加入など、企業側の準備が多いのも事実です。

    この記事では、池袋行政書士事務所「リライアンス東京」の行政書士が、ビルクリーニング分野に特化して採用実務の流れと注意点を解説します。制度の総論ではなく、ビルメンテナンス会社が知りたい実務情報を中心にまとめました。

    この記事でわかること

    • ビルクリーニング分野で雇用できる業務の範囲
    • 外国人側が満たすべき試験・日本語の要件
    • 受入企業(自社)が準備すべき要件・書類
    • 採用から就労開始までのステップ
    • 実務でよく起きるトラブルと対処法

    ビルクリーニング分野で特定技能ビザを使うと何ができるのか

    特定技能ビザのビルクリーニング分野は、厚生労働省が所管する産業分野で、正式には「建物サービス業」に該当します。同分野では、建物内部の清掃業務全般を外国人が担当できます。

    対象となる具体的な業務

    ビルクリーニング分野の特定技能外国人が従事できる業務は、以下のとおりです。

    • フロア(硬質床・カーペット)の日常清掃・定期清掃
    • 床維持剤(ワックス)の塗布・バフィング
    • 窓ガラス・外装の清掃(地上または低層階での作業)
    • トイレ・洗面所・衛生設備の清掃
    • エントランス・廊下・エレベーター内の清掃
    • 什器・備品・照明器具の拭き上げ
    • ゴミの収集・分別・搬出
    注意点

    高所作業(ロープアクセス等)や建物外壁の高層部分の清掃は、ビルクリーニング分野の業務範囲外です。また、建物設備の保守・点検(電気・機械設備等)は別分野(建設・電気工事等)の在留資格が必要となる場合があります。特定技能外国人に清掃以外の業務を兼務させることは原則できません。

    特定技能1号と2号の違い

    ビルクリーニング分野では、2024年3月の制度改正により特定技能2号の受入れが可能になりました。1号・2号の主な違いは下表のとおりです。

    特定技能1号 特定技能2号
    在留期間の上限 通算5年 上限なし(更新可)
    家族帯同 不可 可(配偶者・子)
    技能要件 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 合格 技能検定1級等 or 1号での3年以上の実務経験+試験合格

    2号は現状、取得要件のハードルが高く、まずは1号からのスタートが現実的です。ただし、長期就労を見据えた採用計画を立てる場合は、2号への移行を視野に入れた研修・評価制度を設けておくと離職防止にもつながります。

    外国人が満たすべき2つの要件(技能・日本語)

    特定技能ビザの申請には、外国人本人が以下の2つの要件を満たしている必要があります。ビルクリーニング分野に特有の試験と、共通の日本語要件です。

    技能要件:全ビ連が実施する評価試験

    ビルクリーニング分野の技能要件を満たすには、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会(全ビ連)が実施する「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」に合格する必要があります。

    試験の概要は以下のとおりです。

    • 筆記試験:30問・四択式(清掃作業の知識・安全衛生・建物構造等)
    • 実技試験:床維持剤の塗布、弾性床材の洗浄、洗面台・トイレ周辺の清掃など
    • 実施場所:国内(全国主要都市)および海外(フィリピン・ベトナム・インドネシア等)
    • 合格率:概ね50〜70%程度(年度・地域により変動)
    試験免除のケース

    ビルクリーニング職種で技能実習2号を修了した外国人は、評価試験が免除されます。すでに実習生を受け入れている会社は、実習修了者をそのまま特定技能1号に切り替えることができるため、実務上最もスムーズな採用ルートです。

    日本語要件:N4以上または国際交流基金テスト

    日本語要件は、ビルクリーニング分野に限らず特定技能1号共通の基準です。以下のいずれかを満たせばクリアです。

    • 日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格
    • 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格
    • 技能実習2号修了者は日本語要件も免除

    清掃業務の性質上、高度な日本語力は求められませんが、業務指示・安全確認・緊急時対応のために日常会話レベルは必要です。採用後は社内の多言語対応も検討してください。

    受入企業(特定技能所属機関)が準備すべき要件

    外国人側の要件だけでなく、受入企業側にも複数の義務があります。採用を検討している段階から準備を始めないと、内定後に手続きが遅延するケースがあります。

    雇用形態・賃金の要件

    • 直接雇用のみ(派遣雇用は不可)
    • フルタイム勤務が原則(週30時間以上が目安)
    • 賃金は日本人と同等以上(清掃員の地域別最低賃金・同職種の相場を下回らないこと)
    • 社会保険・雇用保険への加入義務

    支援義務(支援計画の策定)

    特定技能所属機関は、外国人が日本での生活・就労を円滑に行えるよう、下記の支援を実施する義務があります。

    • 事前ガイダンス(入国前・入国後の生活情報の提供)
    • 出入国時の送迎支援
    • 住居確保の支援(物件探し・契約の補助)
    • 生活オリエンテーション(銀行・病院・交通機関の利用方法等)
    • 日本語学習機会の提供
    • 定期面談(3ヶ月に1回以上)・相談窓口の設置
    • 転職支援(やむを得ない離職時)

    支援のすべてを自社で行うことが難しい場合は、登録支援機関に支援業務を委託することが可能です。実務上、多くの企業が登録支援機関を活用しています。委託すれば定期面談の実施代行・書類作成サポートも受けられます。

    協議会への加入義務

    ビルクリーニング分野の特定技能外国人を初めて受け入れた日から4ヶ月以内に、「ビルクリーニング分野特定技能協議会」(厚生労働省所管)に加入しなければなりません。加入しない場合は在留資格の更新が認められない可能性があります。

    採用から就労開始までの流れ(5ステップ)

    実際の採用手続きは、以下の5つのステップで進みます。ビザ申請の審査期間(標準処理期間:1〜4ヶ月程度)を考慮すると、採用決定から就労開始まで半年以上かかるケースもあります。早めに動くことが重要です。

    STEP 1 受入れ体制の整備

    支援計画を自社で策定するか、登録支援機関を選定・委託契約します。社内の担当者を決め、住居確保・生活サポートの体制を整えます。多言語の雇用契約書テンプレートも事前に準備しておきましょう。

    STEP 2 採用活動(候補者の確保)

    主な採用ルートは以下の2つです。①海外送り出し機関を通じた新規採用(フィリピン・ベトナム等)、②国内在住の技能実習修了者の採用(最もスムーズ)。求人サイトを使う場合は、特定技能専門の掲載媒体の利用を推奨します。

    STEP 3 雇用契約の締結・在留資格認定証明書の申請

    雇用条件を確定させ、日本語・母国語の対訳雇用契約書を締結します。その後、出入国在留管理局に「在留資格認定証明書」を申請します(海外在住者の場合)。国内在住の技能実習修了者の場合は「在留資格変更許可申請」を行います。

    STEP 4 入国・就労開始

    認定証明書を本人に送付し、現地の日本大使館でビザを取得後、入国します。入国後は事前ガイダンス・生活オリエンテーションを実施し、就労を開始します。入国時の送迎も支援義務の一環です。

    STEP 5 協議会への加入(4ヶ月以内)

    就労開始(受入れ)から4ヶ月以内に、ビルクリーニング分野特定技能協議会へ加入します。加入手続きはオンラインで完結しますが、期限を過ぎると在留資格の更新に影響が出るため、早めに対応してください。

    実務でよく起きるトラブルと対処法

    当事務所に寄せられる相談の中で、ビルクリーニング分野の採用後に発生しやすいトラブルをご紹介します。事前に把握しておくことで、多くは回避できます。

    「外国人スタッフを採用してから1年が経った頃、他社への転職を申し出られました。引き留めようとしましたが、特定技能は転職が自由だと聞いて戸惑っています。どうすればよいですか?」

    特定技能1号は、同一分野内であれば企業間の転職が自由です。人材を確保し続けるためには、賃金・職場環境・キャリアパスの整備が欠かせません。これはトラブルではなく制度の特性として理解し、定着支援に力を入れることが重要です。

    よくある3つの失敗

    • 協議会加入の遅延:受入れから4ヶ月以内の加入を忘れると、在留資格更新で問題が生じます。就労開始時にスケジュールを設定してください。
    • 業務範囲の逸脱:「ちょっとした設備点検」「草刈り」など、清掃以外の業務を担当させると在留資格の活動範囲外となります。業務内容は雇用契約書・作業指示書に明記しておきましょう。
    • 定期面談の記録漏れ:3ヶ月に1回の定期面談は記録の保存が義務です。実施したつもりでも記録がないと、入管からの指摘対象になります。登録支援機関に委託すれば記録管理も代行してもらえます。

    まとめ:ビルクリーニング分野の採用は「準備の早さ」が鍵

    特定技能ビザのビルクリーニング分野は、試験制度が整備されており、技能実習からの移行ルートも充実していることから、外国人採用の入口として活用しやすい分野です。

    一方で、受入企業側の義務(支援計画・協議会加入・定期面談等)を正しく理解して準備することが、採用後のトラブル防止につながります。

    当事務所では、特定技能ビザの申請から登録支援機関の選定サポート、書類作成まで、ビルメンテナンス会社の採用実務をワンストップで支援しています。「何から始めればいいかわからない」という段階からご相談いただけます。

    特定技能ビザ・ビルクリーニング分野のご相談はお気軽に

    池袋行政書士事務所「リライアンス東京」では、就労ビザ・特定技能ビザを専門とする行政書士が、初回相談を無料で承っています。採用前の準備段階から申請手続き・受入れ後の支援体制構築まで、丁寧にサポートします。

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    井崎忠弘

    この記事を書いた人

    井崎 忠弘行政書士

    リライアンス東京行政書士事務所の代表行政書士。就労ビザ申請取次・相続・会社設立など幅広い業務に対応。依頼者に寄り添い、わかりやすい説明を心がけています。