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「採用した特定技能の外国人スタッフから"休日にアルバイトをしたい"と相談された。認めてもいいのか判断がつかない」
特定技能外国人の受け入れが広がるにつれ、このような相談を受ける機会が増えています。担当者の多くが戸惑う背景には、留学生との混同があります。留学生はアルバイトができる(資格外活動許可の範囲内で)ため、同じ外国人労働者として「特定技能もできるのでは」と誤解されやすいのです。
結論を先にお伝えします。特定技能ビザを持つ外国人のアルバイト・副業は、原則としてできません。企業側が黙認した場合も、コンプライアンス上の問題が生じます。
この記事では、特定技能外国人の就労制限について、企業の人事・総務担当者が知っておくべきポイントを整理して解説します。
この記事でわかること
- 特定技能ビザでアルバイト・副業ができない法的理由
- 就労形態(直接雇用・派遣・業務委託)ごとの可否
- 掛け持ち・複数雇用が許されるケースとそうでないケース
- 違反が発覚した場合の本人・企業双方へのリスク
- 企業担当者が今すぐ確認すべきチェックポイント
筆者は池袋行政書士事務所(リライアンス東京)の代表行政書士です。特定技能の在留資格申請や受け入れ支援を多数手がけた経験から、担当者が実務で判断できるレベルの情報をお伝えします。
特定技能ビザでアルバイトができない理由
在留資格「特定技能」は、出入国管理及び難民認定法(入管法)の別表第一に定められた就労系の在留資格です。この資格で認められる活動は「特定産業分野に属する相当程度の知識若しくは経験を必要とする技能を要する業務」に限定されています。
つまり、在留資格に紐づいた「特定産業分野」「所属機関(雇用主)」の範囲内でしか働くことができず、その枠を超える活動はすべて「資格外活動」として禁じられています。
留学生とは根本的に制度が異なる
「留学生はアルバイトができる」というイメージから、特定技能外国人も同様にできると誤解されることがあります。しかし、両者の制度はまったく異なります。
| 在留資格 | 本来の活動 | アルバイト・副業 |
|---|---|---|
| 留学 | 教育機関での学習 | 資格外活動許可を取得すれば週28時間まで可 |
| 特定技能1号・2号 | 特定産業分野での就労 | 資格外活動許可の対象外。原則として不可 |
留学生は「学習」が本来の活動であるため、補助的な就労を「資格外活動許可」として認める仕組みがあります。一方、特定技能は「就労」そのものが在留の目的であり、すでに就労が許可された状態です。そのため「さらに別の就労を許可する」という資格外活動許可の制度の対象にはなりません。
入管法第70条は、在留資格で認められた活動以外を行った外国人に対して「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」を科す規定(資格外活動罪)を設けています。アルバイト・副業が「バレなければよい」という問題ではなく、刑事罰の対象となる行為です。
「分野外」だけでなく「就労形態」にも制限がある
特定技能の就労制限は「分野が違うからNG」だけではありません。就労の「形態」そのものにも制限があります。代表的なパターンを整理します。
| 就労形態 | 可否 | 理由・補足 |
|---|---|---|
| 直接雇用(正社員・フルタイム) | ○ 原則OK | 特定技能の標準的な就労形態 |
| 派遣(人材派遣会社経由) | × 原則NG | 農業・漁業分野のみ例外的に認められる |
| 業務委託・フリーランス | × NG | 「雇用契約」が必須。委託契約では特定技能の活動に該当しない |
| アルバイト(資格外活動) | × NG | 在留資格の活動範囲外。資格外活動罪の対象 |
ウーバーイーツ・ネット副業もNG
近年増えている相談が「ウーバーイーツなどの配達をしたい」「インターネットで副業(動画制作・翻訳等)をしたい」というケースです。
ウーバーイーツの配達員は「個人事業主」扱いであり、雇用契約に基づく就労ではありません。特定技能は雇用契約に基づく就労が前提のため、個人事業主としての報酬受け取りは資格外活動に該当します。インターネットを通じた副業も同様の問題があります。
「日本円を受け取ったかどうか」は関係ない
「無報酬だから問題ない」「外貨で受け取ったから大丈夫」という判断は誤りです。入管法上の「活動」は、報酬の有無・通貨の種類に関わらず問題になります。就労の実態があるかどうかで判断されます。
掛け持ち・複数雇用はできる?
「同じ特定産業分野の会社で掛け持ち就労はできないか」という質問もよく受けます。
原則:1人の特定技能外国人に1つの雇用主
特定技能の在留資格申請では、受け入れ機関(雇用主)が申請書類に記載されます。複数の雇用主と同時に雇用契約を結ぶ形の「掛け持ち就労」は、支援計画の整備・所属機関等届出の複数管理が必要になり、実務的には困難です。いずれかが「本業以外の活動」とみなされるリスクがあります。
農業・漁業は例外的に複数雇用が認められている
農業分野と漁業分野については、季節性の高い業務特性に配慮し、複数の事業者との同時雇用(複数雇用主)が制度上認められています。農繁期・農閑期を複数の農家で分担するような形での就労が可能です。
ただしこれは農業・漁業分野に限った特例です。製造業・外食業・介護等、それ以外の分野では同様の扱いは認められていません。
「残業・短時間勤務の変更」は別の問題
掛け持ちや副業とは別に「労働時間の変更」について迷う担当者もいます。特定技能はフルタイム勤務(週28時間以上)が要件ですが、育児休業や休職などの一時的な変更は認められます。ただし恒常的な週28時間未満への変更は、在留資格の要件を満たさなくなる可能性があるため、事前に専門家への確認を推奨します。
違反が発覚した場合のリスク
「バレなければいい」という発想は非常に危険です。資格外活動の摘発は、税務調査・入管の実地調査・第三者からの通報など、さまざまなきっかけで行われます。発覚した場合のリスクは本人だけでなく、受け入れ企業にも及びます。
本人(外国人)へのリスク
本人に課されるリスク
入管法第70条により、資格外活動を行った外国人には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。さらに、在留資格の取消処分(入管法第22条の4)の対象となり、強制退去になる可能性があります。在留資格を失った場合、再度の在留資格取得も大幅に制限されます。
受け入れ企業(雇用主)へのリスク
企業に課されるリスク
企業が「知っていた」または「知り得た状況で黙認していた」場合、入管法第73条の不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が適用される可能性があります。また、受け入れ機関として指導・取消処分を受けると、以降の特定技能外国人受け入れが困難になります。
「知らなかった」では免責されないケースがある
担当者が外国人スタッフの副業を「知らなかった」として、企業の責任を問われないように見えるケースでも、「監督義務を果たしていたか」が問われます。定期面談や就業規則の整備など、適切な管理を怠った場合は管理監督義務違反として問題になることがあります。
企業担当者が今すぐ確認すべきポイント
特定技能外国人を受け入れている、または受け入れを検討している企業の担当者は、以下の点を確認してください。
- 雇用契約書または就業規則に「他社での就労・副業の禁止」が明記されているか
- 入社時のオリエンテーションで「特定技能ビザでのアルバイト禁止」を本人に説明しているか
- 支援計画の「生活オリエンテーション」に就労制限の説明が含まれているか
- 定期面談(4半期ごと義務)で副業・兼業の有無を確認しているか
- 農業・漁業分野で複数雇用を検討している場合、届出・支援計画の整備が完了しているか
実務上のポイント
外国人スタッフから「アルバイトしてもいいか」と聞かれた際の正しい対応は、「できません」と明確に伝えることです。「たぶん大丈夫だろう」「ばれなければいい」という判断を企業側がしてはなりません。不安な場合は在留資格申請を担当している行政書士に確認を依頼してください。
よくある質問
Q休日に同じ分野(例:外食業)の別の会社で短時間働くことはできますか?
原則としてできません。同じ分野であっても、在留資格申請に記載されていない別の雇用主のもとで就労することは、入管法上の届出・支援計画の整備が別途必要になります。「同じ分野だから大丈夫」という判断は誤りです。複数雇用を希望する場合は、すべての雇用主について適切な申請・届出を行う必要があります。農業・漁業分野は制度上の例外があります。
Q外国人スタッフが無断で副業をしていた場合、企業も罰則を受けますか?
企業が「知らなかった」場合でも、管理監督義務を怠っていたと判断されれば責任を問われる可能性があります。就業規則・雇用契約書への明記、定期面談での確認、入社時のオリエンテーションの実施など、会社側が適切な管理体制を整えていたかどうかが重要です。不法就労助長罪に問われるリスクを避けるためにも、社内ルールの整備が不可欠です。
Q農業分野では掛け持ちが認められると聞きましたが、具体的にどういう条件ですか?
農業分野では「複数の農業者(事業者)と同時に雇用契約を結ぶこと」が制度上認められています。ただし、それぞれの雇用主が受け入れ機関として適切な届出を行い、支援計画を整備する必要があります。雇用主間での役割分担や、外国人本人への支援の重複がないよう調整することも求められます。複数雇用を検討する場合は、事前に行政書士や出入国在留管理庁に確認することをお勧めします。
Q特定技能外国人が自国の家族への仕送りのためにどうしても副収入が必要と言っています。何か方法はありますか?
合法的な方法で収入を増やすことができるのは、現在の雇用契約の範囲内でのみです。時間外労働(残業)・賞与・昇給など、現在の雇用主との雇用契約を通じた収入増加が唯一の合法的な手段です。「副業を認めてあげたい」という気持ちは理解できますが、企業側が許可することはできません。本人には就労制限の説明をした上で、社内での処遇改善を検討してください。
まとめ
特定技能ビザでのアルバイト・副業に関するポイントをまとめます。
- 特定技能ビザでのアルバイト・副業は原則として不可。在留資格で許可された「特定産業分野の業務」以外の就労は資格外活動に該当する
- 留学生の資格外活動許可とは別制度。「留学生はできるから特定技能もできる」という混同は危険
- 就労形態にも制限あり。派遣(農業・漁業以外)・業務委託・個人事業主としての就労も不可
- 掛け持ち・複数雇用は農業・漁業分野のみ例外的に認められている
- 違反時のリスクは本人だけでなく受け入れ企業にも及ぶ。管理体制の整備が企業の義務
特定技能外国人の就労管理は、採用の入り口だけでなく、在留中の継続的な管理も含めた体制整備が求められます。「スタッフから副業について聞かれた」「就業規則に明記すべきか迷っている」といったご相談は、池袋行政書士事務所(リライアンス東京)へお気軽にどうぞ。特定技能の在留資格申請・受け入れ支援を専門に取り扱い、個別の状況に応じたアドバイスを行っています。